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〒349-1105 埼玉県久喜市小右衛門714-6

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診療部 - 脳神経外科

外科手術・治療情報データーベースについて

当院は、一般社団法人 NationalClinicalDatabase(NCD)の外科手術・治療情報データーベース事業に参加しています。
皆様のご理解とご協力をお願い致します。
NCD 詳しくは、こちらをクリック(PDF:171KB)

スタッフ

リハビリテーション科
担当部長
鰐渕 博
島根医大(現島根大医学部)卒
主な診療分野 脳腫瘍、脳血管障害
認定・専門・指導医 日本脳神経外科学会脳神経外科専門医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
臨床研修指導医
科長 大城 信行
琉球大学医学部卒
主な診療分野 脳神経外科一般
認定・専門・指導医 日本脳神経外科学会脳神経外科専門医
日本医師会認定健康スポーツ医
ボトックス注施行医
産業医
医員 岡 美栄子
東京女子医科大学卒
主な診療分野 脳神経外科一般
認定・専門・指導医 緩和ケア研修会修了

特色・得意分野

地域医療支援病院として近隣の医院や病院と連携を密にし、脳疾患の患者さんを紹介いただき高度な医療を提供できるように努めています。

当科では脳卒中などの急性期疾患に力を入れ、24時間365日体制で救急治療を行えるようにしていますが、緊急手術中の救急搬送はやむを得ず他院へ依頼することがあります。申し訳ありませんが、ご了承いただけますようお願いいたします。

当科で診る病気

脳血管障害(くも膜下出血、脳梗塞、脳内出血、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、もやもや病、内頚動脈狭窄症など) 、脳腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、神経膠腫、転移性腫瘍など)、頭部外傷、水頭症

脳卒中について

脳神経外科では、脳血管障害(脳卒中)、脳腫瘍、頭部外傷、水頭症、脊髄疾患などが対象となります。脳の病気でも認知症やパーキンソン病などは神経内科の診察が必要となります。

脳卒中・脳血管障害
 脳梗塞脳内出血くも膜下出血を合わせた脳血管の病気を脳卒中といいます。
 意識障害、半身麻痺、言語障害などが突然起きます。もしそのような場面に遭遇したら直ぐに救急車を呼んでください。
 血管が閉塞し脳に血液が届かなくなる脳梗塞では、発症4.5時間以内にt-PAという薬で再開通を試みることができます。また、8時間以内ならカテーテル治療による血栓回収も適応になります。
 くも膜下出血は突然死することが多い病気です。脳の血管にできたコブ(動脈瘤)が破れて出血します。強い頭痛で発症し再出血を起こさないように緊急に脳動脈瘤の手術を行います。手術はカテーテルによるコイル塞栓術と開頭して行うクリッピング術があります。患者さんの状態、動脈瘤の部位などにより治療法が選択されます。
 脳卒中で脳が障害されると麻痺や言語障害、記憶障害などの後遺症が残ります。急性期からリハビリテーションを始めることでできるだけ機能を回復させるようにします。後遺症により介護が必要になることも多く、要介護の原因でもっとも多いのも脳卒中です。
 脳卒中は発症予防、再発予防が重要で、高血圧、糖尿病をはじめ生活習慣病の管理が欠かせません。当院ではかかりつけ医との連携を強くし内科的治療や管理がスムースに行われるようにしています。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤や脳梗塞の原因となる頚動脈狭窄や頭蓋内動脈の狭窄に対しては外科的治療が必要になることがあります。「切る手術」(脳動脈瘤クリッピング、頚動脈内膜剝離術、バイ
パス術など)と「切らない手術」(脳動脈瘤コイル塞栓術、頚動脈ステント留置術など)があり、患者さんの状態に応じより安全で長期成績が確実な治療を行います。
くも膜下出血
脳の表面や皺の間は膜で覆われていて、太い血管はクモの巣に引っ掛かるように支えられています。クモの巣のような膜なのでくも膜と呼ばれ、くも膜と脳の間の隙間をくも膜下腔といいます。くも膜下腔にある太い動脈にできたコブ(脳動脈瘤)が破れると、くも膜下腔に勢いよく出血します。これがくも膜下出血です。

くも膜下出血のほとんどは脳動脈の一部がふくらんでできた動脈瘤の破裂が原因です。くも膜下出血は男性より女性に多く,40歳以降に多くみられ,年齢とともに増加します。家系内に動脈瘤やくも膜下出血になった方がいるときは発生頻度が高く,また高血圧、喫煙、過度の飲酒は動脈瘤破裂の可能性を数倍高くすると報告されています。

症状は突然の激しい頭痛と嘔気です。頭蓋骨内の限られた容積内に動脈性の勢いのある出血が起きるため急激に脳圧が上がります。通常は心臓から送り出される血圧が脳圧より高いため血液が脳に循環しますが、脳圧が高くなると十分な血液が脳に循環しないため意識を失い、重症では死亡します。また、脳への急激なストレスが加わるため、大量のカテコールアミンが放出され、不整脈を誘発し死亡することもあります。くも膜下出血を生じた人の半数は死亡または寝たきりの状態、4分の1が後遺症はあるが自宅の生活に戻れるレベル、社会復帰できるのは残り4分の1程度と、非常に経過の悪い病気です。 脳動脈瘤は血管の分岐部で血管壁に血流の圧が加わる部位に生じます。首から頭蓋骨に入ってすぐの脳深部の太い動脈は、一部血流が途絶えても他から血液が流れるように輪になって繋がっています。これをイギリスの医師トーマス・ウィリスから名づけられウィリス動脈輪といいます。動脈瘤はウィリス動脈輪にできやすく、前交通動脈(A-com)、内頚動脈後交通動脈分岐部(IC-PC)、中大脳動脈分岐部(MC)、脳底動脈先端部(Ba-tip)が動脈瘤の好発部位です。

破裂した脳動脈瘤を放置しておくと再出血し死亡することが多く危険なため、再破裂,再出血予防の手術を行います。動脈瘤の根元をチタン製のクリップで挟んで動脈瘤への血流を無くす開頭クリッピング術か、動脈瘤内にコイルを入れ血栓化させ破れなくするコイル塞栓術を行います。

くも膜下出血では再出血とともに脳血管攣縮(スパズム)が様態を悪化させます。脳血管攣縮(スパズム)とは、くも膜下出血発症4-14日目に起きる血管が細くなる病態で、脳の血流が極端に少なくなるため脳梗塞となり、重い後遺症を残します。脳動脈瘤再破裂防止の手術後は、脳血管攣縮予防が治療の主体となります。また、脳脊髄液の循環障害により、脳室内に髄液が貯留する水頭症が生じることがあります。水頭症に対しては過剰な髄液を腹腔内に流し吸収させるよう髄液シャント術を行います。

くも膜下出血になったら脳神経外科のある病院で集中治療が必要です。
脳血管攣縮期の目安である2週間は集中治療を行います。
発症時にわりと軽症で意識もはっきりしているような患者さんは社会復帰できるまで回復する可能性が高いのですが、意識不明のような重症の患者さんは命が助かっても寝たきりで介護が必要になることがほとんどです。 発症時の重症度でその後の経過もある程度予測できます。

脳動脈瘤ができないようにする治療は現時点でありません。脳動脈瘤自体は神経を圧迫しなければ、破れてくも膜下出血を起こさない限り症状もありません。破れる前にクリッピング術やコイル塞栓術を受ければくも膜下出血は防げますが、手術ですから合併症の危険もあり、他の病気にかかることもあります。MRIなどで偶然脳動脈瘤が見つかった場合にも、手術をするかそのままにしておくかは十分検討する必要があります。2012年6月にUCAS JAPANという日本の研究データが報告され、高血圧のある女性、7mm以上の大きさ、前交通動脈瘤、後交通動脈瘤は破裂の危険が高くなると結果が示されました。当科でも偶然みつかった小さな動脈瘤は手術せずに定期的に検査し、もし大きさや形が変われば手術を行うようにしています。
脳出血
高血圧症では常に血管に高い圧力が加わっているため、血管の壁は弾力性がなくなり脆くなります。くも膜下出血は太い動脈から出血しますが、脳出血は前兆なく脳内の細い血管が破れることで生じます。脳卒中に占める脳出血の頻度は少なくなっていますが、今でも日本は欧米の2-3倍高く、血管が詰まることと破れることの両方の管理が必要なのです。出血で損傷された脳の大きさや部位により意識障害、麻痺、失語症、平衡感覚障害などの後遺症が残ります。

血腫除去の手術を行うか、手術を行わず保存的治療を行うかは、出血の量や部位で決まります。症状や年齢、全身状態も手術適応には関係してきます。被殻、小脳、皮質下といった部位では脳細胞の二次的障害予防のためにも手術を行います。2009年の脳卒中治療ガイドラインでの手術適応は以下の通りです。

被殻出血:神経学的所見が中程度、血腫量が31ml以上で血腫による圧迫所見が高度なもの。
小脳出血:最大径3cm以上のもの、脳幹を圧迫し脳室閉塞による水頭症を来たしているもの。
皮質下出血
:脳表からの深さが1cm以下のもの。
視床出血脳幹出血では血腫除去による脳の損傷で症状が悪化することもあり原則手術を行いません。血腫の脳室穿破を伴うものや脳室拡大の強いものには脳室ドレナージを行います。

現在、脳神経の再生医療の研究も盛んで将来的には完全に損傷されていない脳細胞が再生する治療が出てくると思われます。しかし今はまだ出血により破壊された脳細胞を元に戻すことはできません。そのため、脳卒中では治療とともにリハビリテーションが重要となります。脳梗塞やくも膜下出血でも同じですが、早期からのリハビリテーションが後遺症を軽くすることがわかっています。当院では脳卒中患者全員を入院日にリハビリ科と診察し急性期リハビリを積極的に行っています。

脳動静脈奇形(AVM)
脳の血管も動脈から毛細血管を経て静脈へと移っていきますが、脳動静脈奇形は動脈(feeder)が異常な血管の塊(nidus)を通って直接静脈(drainer)へと繋がります。動脈よりも薄い血管壁の静脈に動脈と同じ圧の血液が流れ、動脈側に動脈瘤を伴うことも多いために、破れてくも膜下出血や脳内出血を起こす危険があります。 脳動静脈奇形は生まれつきの血管奇形とされていましたが、最近は後天性の血流のストレスも影響するといわれています。出血の頻度は1年間に2-3%で、生涯に出血する確率は(105-年齢)%とされています。これによると30歳では75%の確率で今後出血する危険があります。

大きさ、機能部位、静脈により点数化されたSpetzler-Martinの分類というものがあり、grade1-2では手術、3は塞栓術と外科手術、4と5は出血例、進行例以外は保存的治療が勧められています。手術の危険性が高く病変が小さい場合は定位放射線治療が行われます。定位放射線治療での完全閉塞率は65-84%、ガンマナイフの治療は10cm3(最大径3cm)以下ですが、照射を分けたりすることで深部のより大きい脳動静脈奇形の治療も行われるようになってきています。

脳動静脈奇形に関するSpetzler-Martin分類

  点数
大きさ
小 <3cm 1
中 3-6cm 2
大 >6cm 3
周囲脳の機能的重要性
重要でない(non-eloquent) 0
重要である(eloquent) 1
導出静脈の型
表在性のみ 0
深在性 1
もやもや病
日本で発見された疾患で小児の脳卒中の原因となります。ウィリス動脈輪の進行性の閉塞が起こり、もやもや血管はその代償として発達した周囲の血管を指します。 好発年齢は10歳以下と40歳前後です。小児は一過性脳虚血発作や脳梗塞などの虚血症状で発症することが多く、成人では脳梗塞と脳出血が約半数ずつとなっています。 脳虚血症状に対しては血行再建術を行います。出血発症のものでは血行再建術が再出血率を低下させるという報告や、内科的治療と差がないという報告があります。「手術を行うことを考慮してもよい」と脳卒中治療ガイドライン2009には書いてあり、現在、手術が有効かどうか調べる共同研究が日本で行われています。
脳梗塞
症状は顔面や手足の片側麻痺、話が理解できない、言葉が出にくい(失語症)、手足の片側のしびれ(感覚障害)、視野障害などが突然に起きます。血管閉塞の脳の領域により出る症状は異なり、症状から脳のどの領域が障害されたか分かります。頭痛や「頭がぼーっとする感じ」というのは脳梗塞ではありません。また、一時的な意識消失も脳ではなく心臓の病気のことが多いのです。


検査は頭部MRI、CT、頚動脈エコー、脳血管造影、心エコー等を行います。発症して数時間以内の脳の変化はCTでは分かりにくいのですが、MRIでは発症してすぐの脳の変化が分かり有用です。脳梗塞の原因は脳の血管だけでなく、頚動脈や大動脈、心臓、血液などに異常があることも多く、原因検索が重要です。 脳梗塞は、詰まる血管の太さやその詰まり方によって、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞の3つに分類され、治療法も変わってきます。

アテローム血栓性脳梗塞とは、頭蓋内外の脳動脈のアテローム硬化で脳の血管が詰まるものです。アテローム硬化は動脈硬化の1つで、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・肥満などが原因となり、血管の内側にコレステロールや血液の一部が沈着したものです。細かくいうと、血管の内皮細胞が高血圧などで傷つき、その下の結合組織に血小板が集まり血栓を作ったもので、プラークといいます。感染による血管の慢性炎症もプラーク形成の原因となります。血管はかなり狭窄しても血流は保たれるものですが、例えば頚動脈のプラークが剥がれて末梢に流れて脳の動脈を閉塞させると脳梗塞が起きます。 剥がれやすいプラークを不安定プラークといいます。からだの血管は全て繋がっているため、脳や頚動脈にプラークがあれば虚血性心疾患も合併していることがあります。

心原性脳塞栓症は心臓にできた血栓が剥がれて血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰めるものです。心房細動などの不整脈で心臓の中に血栓ができることが原因です。脳の側副血行路も発達していないところで太い血管が突然詰まってしまうため、脳梗塞の中で最も重篤です。

ラクナ梗塞は、脳の細い動脈(穿通枝)の閉塞で起きます。CTやMRIでは直径15ミリ以下の脳梗塞がみられます。高血圧、糖尿病、喫煙などが原因です。 この穿通枝が破れると脳出血となります。
一過性脳虚血発作(TIA)
手足や顔面の片側麻痺、しびれ、片側の目が見えない(一過性黒内障)、話が理解できない、言葉が出にくいなどの症状が出現し24時間以内、多くは10分以内に消失するものです。 脳梗塞の前兆で、一過性脳虚血を起こすと3ヵ月以内に10〜15%が脳梗塞を発症しますが、その半数は48時間以内と言われています。迅速な原因検索と治療が必要で、当科では脳梗塞と同じように治療を行っています。
無症候性脳梗塞
症状がなくともMRIなどの検査で脳梗塞がみられるもので、通常辺縁不整で3mm以上の病変(MRIのT1強調画像で低信号域、T2強調画像で高信号域)を指します。無症候性脳梗塞があると、将来の脳卒中発症リスクが4倍以上、認知症発症リスクが2倍以上になると言われています。高血圧や糖尿病などの基礎疾患の治療を厳格に行うことが、将来の脳卒中発症予防のために重要です。無症候性脳梗塞では、動脈硬化の進行により脳梗塞だけではなく脳出血の発症も多いため、抗血小板薬の投与は慎重に決めていきます。

脳梗塞の再発予防の薬は病型によって異なります。

動脈硬化が主な原因になっているアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞の再発予防には、抗血小板薬(バイアスピリン、プラビックス、プレタール等)を内服します。抗血小板療法は、血液の成分である血小板が活性化して固まるのを抑えることにより血栓を作りにくくし、脳の血管が詰まるのを防ぎ再発を予防します。 一方、心房細動などにより心臓内にできた血栓が原因で発症する心原性脳塞栓症の予防には、抗凝固薬(ワーファリン、プラザキサ等)を内服します。血液中にある血液を凝固させる成分の働きを抑制し、血液の固まりができるのを抑える薬です。
非弁膜症性心房細動患者で脳梗塞発症に関与する因子として、うっ血性心不全(C)、高血圧(H)、年齢(A)、糖尿病(D)、脳卒中または一過性脳虚血発作の既往(S2)の各因子(CHADS2と呼ばれている合計6点のスコア)が、多く含まれるほど脳卒中発症リスクは高くなります。 CHADS2スコアで2点以上であればワーファリンによる抗凝固療法が推奨されています。

なお、脳梗塞急性期では、t-PA静注療法ラジカット(脳保護療法)は臨床病型にかかわらず投与可能です。しかし他の薬物は臨床病型によって使えないものがあります。 そのためにも脳梗塞急性期には早急に臨床病型を診断する必要があるのです。

外科的治療では、頸動脈内膜剥離術(CEA)、頸動脈ステント留置術(CAS)、頭蓋外‐内血管吻合術(EC-IC bypass)を行います。
頸動脈内膜剥離術は頸動脈を直接切開し、頸動脈内に付着しているプラークを取り除く手術です。頸動脈ステント術は細くなった頸動脈に金属の筒(ステント)を入れ、血管を内側から広げる手術で、カテーテルで行う血管内治療というものです。頸動脈狭窄症に対しては頸動脈内膜剥離術と頸動脈ステントのどちらが安全で長期的にも有効かを検討して治療法を決めています。
症候性の内頚動脈、中大脳動脈本幹の閉塞、高度狭窄があり、下記のガイドラインの適応条件に合うものは頭蓋外‐内血管吻合術(バイパス手術)を行います。頭皮の動脈を脳内の動脈に繋げることで脳の血流を増やす治療です。
【バイパス手術の適応条件】
①内頸動脈系の閉塞性血管病変によるTIAあるいはminor strokeを3ヵ月以内に生じた73歳以下のmodified Rankin Scaleが1あるいは2の症例。
②CTあるいはMRI上一血管支配領域に亘る広範囲な脳梗塞巣をみとめず、脳血管撮影上、内頸動脈あるいは中大脳動脈本幹の閉塞あるいは高度狭窄例。
③最終発作から3週間以上経過した後に行ったPETもしくは、SPECT(133Xeあるいは123IMP)、cold Xe CTを用いた定量的脳循環測定にて、中大脳動脈領域の安静時血流量が正常値の80%未満かつアセタゾラミド脳血管反応が10%未満の脳循環予備力が障害された例。

また、最近はカテーテルを用いた脳梗塞急性期の血栓除去療法(メルシー、ペナンブラ)といった新しい治療法も行われるようになり、脳梗塞急性期の治療も変わってきています。

脳腫瘍

 脳腫瘍には、周囲の脳組織や血管を圧迫しながら大きくなる良性脳腫瘍と、脳神経組織から生じ脳内に浸潤しながら大きくなる悪性脳腫瘍があります。
 良性脳腫瘍には髄膜腫、神経鞘腫などがあり、悪性脳腫瘍には神経膠腫などがあります。良性脳腫瘍は摘出手術により治療可能で、当院では腫瘍の位置を確認するナビゲーションシステムや神経の機能を確認する神経モニタリングを行いながら手術を行っています。
 悪性脳腫瘍は術後に放射線治療が必要となるため放射線照射装置のある他施設へ紹介しています。

脳腫瘍の検査
CT, MRI:ほとんどの腫瘍は造影剤で造影されます。 腫瘍のほかにも腫瘍周囲の脳浮腫、正常構造の圧迫、水頭症の有無なども確認します。
血管造影:髄膜腫や膠芽腫などでは栄養血管が豊富で腫瘍陰影がみられます。
SPECT, PET:腫瘍と他の疾患との鑑別、腫瘍の悪性度や再発の評価をします。 検査が必要な場合、他院へ検査を依頼します。
腫瘍マーカー:悪性リンパ腫以外は原発性脳腫瘍に特有のマーカーはありません。 転移性脳腫瘍では鑑別や病態の推移に重要です。
髄液検査:腫瘍の髄液播種や悪性リンパ腫でのβ2ミクログロブリン上昇をみます。
脳腫瘍の治療
手術
手術のみで治療:良性腫瘍(髄膜腫、聴神経腫瘍など)
他の治療も必要:悪性腫瘍(神経膠腫、転移性脳腫瘍)
放射線治療
拡大局所照射(腫瘍の周囲2㎝までを含む):神経膠腫 全脳照射:悪性リンパ腫、多発性の転移性脳腫瘍 定位放射線治療:転移性脳腫瘍、聴神経腫瘍 (ガンマナイフでは直径3cm以下の腫瘍を治療)
化学療法
(悪性)神経膠腫、悪性リンパ腫、胚細胞腫瘍 脳には血液脳関門(BBB)という、血管から神経細胞に有害物質が移行しないように働く障壁が存在するため、多くの抗がん剤は脳へ到達しません。分子量が小さく血液脳関門を通過するテモゾロミド(テモダール)が神経膠腫の治療に使われます。

ガンマナイフを含む放射線治療、化学療法は専門の施設へ紹介します。
髄膜腫(メニンジオーマ)
脳を包んでいる膜(髄膜)からできる良性腫瘍です。周囲脳を圧迫しながら腫瘍は増大します。女性に男性より2倍多く発症します。良性腫瘍のため治療の原則は摘出術で、腫瘍の栄養血管が多いときは摘出術前に塞栓術を行います。頭蓋底部など摘出困難な部位は、腫瘍を部分摘出し残存部にガンマナイフを照射します。ほとんどが良性ですが、悪性の髄膜腫も約5%存在します。
髄膜腫の摘出率は「Simpson grade(シンプソン分類)」で分けられています。
 グレード1: 腫瘍の全摘出と、硬膜付着部、異常な骨を除去したもの(再発1割)
 グレード2: 腫瘍の全摘出に、硬膜の付着部を凝固したもの(再発2割)
 グレード3: 腫瘍は全摘出を行うが静脈洞や神経・脳に付着した部分をそのままにする(再発3割)  グレード4: 部分摘出(再発4割)
 グレード5: 単に減圧を行ったもの
無症候性髄膜腫
頭部MRIで偶然に髄膜腫がみつかる確率は0.9%といわれています。
「脳ドッグのガイドライン2008」では、蝶形骨縁内側型髄膜腫は視力障害を生じる危険があり、予防的な摘出術が推奨されていますが、その他の部位に対してはMRIでの経過観察とされています。小さいほうが手術の危険性も少ないのですが、腫瘍が大きくならない可能性もあります。腫瘍が大きくなっているときは手術を行うタイミングも大事です。
神経膠腫(グリオーマ)
脳と脊髄には神経細胞と神経線維の他にその間を埋めている神経膠細胞があります。神経膠腫(グリオーマ)はこの神経膠細胞から発生する腫瘍の総称です。神経膠細胞は、さらに星状膠細胞、稀突起膠細胞、上衣細胞などと分類され、これらから発生する腫瘍はそれぞれ、星状細胞腫、稀突起神経膠腫、上衣腫などと呼ばれます。 それらをまとめて神経膠腫(グリオーマ)と呼んでおり、原発性脳腫瘍の25.2%(4人に1人) を占めます。

悪性度はグレードⅠ(星細胞腫)からグレードⅣ(膠芽腫)の4段階に分類されます。良性の神経膠腫が悪性に転化することもあります。生存期間中央値(50%の人が生存している期間)は、グレードⅠで8~10年、グレードⅡで7~8年、グレードⅢで約2年、グレードⅣで1年未満というデータが報告されています。

神経膠腫は脳・脊髄内に拡がって浸潤性に増殖します。脳内の同じ場所に正常脳組織と腫瘍細胞が混在しているので、手術で全摘出することはできません。また、脳の血管が抗がん剤などの物質を通過させにくい(BBBの存在)ことも治療が難しい一因です。しかし、近年はテモゾロミド(テモダール)という抗がん剤の有効性が証明され、テモゾロミドと放射線治療を一緒に行うことでより効果的となり、予後も改善されています。テモゾロミドはDNAの合成を阻害して腫瘍細胞を死滅させる抗がん剤です。
下垂体腺腫
下垂体とは脳の中心部にぶら下がった形をしたホルモンの中枢です。この下垂体の一部が腫瘍化したものが下垂体腺腫で、組織学的には良性の腫瘍です。
ホルモンを過剰に分泌するもの (ホルモン産生腺腫)とホルモンを分泌しないもの (非機能性腺腫)に大きく分けられ、ホルモン分泌の種類により以下のように分類されます。

 非機能性下垂体腺腫(40%):ホルモンの過剰分泌がみられない腫瘍
 プロラクチン産生腫瘍(30%):プロラクチノーマ
 成長ホルモン産生腫瘍(20%):先端巨大症・巨人症
 副腎皮質刺激ホルモン産生腫瘍(5%):クッシング病
 甲状腺刺激ホルモン産生腫瘍(1%)
 性腺刺激ホルモン産生腫瘍
非機能性下垂体腺腫
男性に多くみられます。

ホルモン過剰分泌の症状がはっきりしないため、かなり大きな腫瘍になってからみつかります。

一般的な症状は、下垂体のすぐ真上にある視神経が圧迫され、両眼の耳側 (外側)半分 が見えなくなる両耳側半盲です。頭痛を伴うこともあります。

また、正常下垂体の圧迫により、性機能障害、月経不順、無月経や乳汁分泌などの下垂体前葉機能不全症が生じます。疲れやすくなり、抵抗力も低下します。さらに色白になり、腋毛や恥毛の脱落がみられる場合もあります。
プロラクチン産生腫瘍(プロラクチノーマ)
若い女性 (20~40歳代)に多くみられます。

月経不順、無月経や乳汁分泌が生じます。(妊娠していないのに体が妊娠しているような状態になります)

男性では性欲低下や勃起不全が生じますが、なかなか気づかれずに腫瘍が大きくなって視力や視野に異常がみられるようになり発見されることがほとんどです。

内科的治療、ブロモクリプチン(パーロデル)やカベルゴリン(カバサール)が有効です。
成長ホルモン産生腫瘍:先端巨大症・巨人症
骨端線の閉じる前 の小児期では、身長や手足が異常に伸び巨人症になります。

成人になってからは手足の先端や額、下顎、鼻、唇、舌などが肥大し先端巨大症といわれます。

男性では性機能の低下、女性では無月経なども起こります。放っておくと糖尿病、高血圧、心不全などになり命に関わります。癌も発生しやすくなります。
副腎皮質刺激ホルモン産生腫瘍:クッシング病
若年から中年の女性に多く、肥満が特徴です。

顔が満月様に丸くなり、手足に比べて胸や腹部が太る、いわゆる中心性肥満という体型になります。にきびもできやすく、体毛が濃くなります。女性では無月経にもなります。 うつ状態も多くみられます。頑固な高血圧や糖尿病を伴うこともよくあります。

下垂体腺腫の治療は、鼻から下垂体へアプローチし腫瘍を摘出する経鼻的経蝶形骨洞腫瘍摘出術を行います。しかし、プロラクチン産生腫瘍(プロラクチノーマ)などでは内科的治療が優先されます。

当院では上記の他に、聴神経腫瘍、転移性脳腫瘍、血管芽腫、頭蓋底腫瘍などの治療に力を入れています。セカンドオピニオンも随時受け入れています。

頭部外傷

近年は自動車事故、バイク事故による怪我は減っていますが、自転車事故が増えています。無理なスピードや追い越しなどで頭部、顔面、脊髄や全身に受傷するケースが増えています。また、高齢者では、慢性硬膜下血腫という、軽い外傷の後に時間をかけて脳と硬膜の間に血液が溜まってくるものがあります。急速に物忘れが進行するときは慢性硬膜下血腫が原因のことがあります。

外来診療
頭皮や筋肉の挫傷、皮下出血(たんこぶ)で、脳に損傷はない場合、外来処置、経過観察となります。外来では待ち時間短縮のため問診票記入時に診察前にCT検査を行うかお伺いしています。
経過観察時は、自宅で次のようなことに注意していただき、異常があればすぐに連絡いただくことになります。
  1. ぼんやりしてくる、放っておくとすぐ眠ってしまい、起こしてもなかなか起きない。
  2. 吐き気、嘔吐が何度も起こる。
  3. 物が見えにくくなる、二重に見える。
  4. 手足が動きにくくなる、しびれる。
  5. 痙攣が起きる
受傷翌日まで様子を見て問題なければ通常の生活に戻ります。
高齢者では受傷1-2カ月後に硬膜の内側に血腫が生じてくる慢性硬膜下血腫を起こすことがあります。物忘れが進んでいる、手足に力が入りにくい、歩くときに傾くといった症状があれば外来受診が必要です。
入院が必要なもの
頭蓋骨は厚く硬い骨ですが、強い外力では骨折を起こし頭蓋骨内にも出血や脳挫傷が起きます。骨折がなくとも頭蓋内に出血や脳挫傷ができることがあります。脳挫傷というのは脳の一部が潰れ出血し機能を失う状態です。
脳に損傷が生じると意識がはっきりしない、会話ができない、手足の動きが悪くなる、という症状が出ます。
以下に挙げるような頭蓋骨から内部の損傷では入院が必要です。
  1. 頭蓋骨骨折
  2. 急性硬膜外血腫
  3. 急性硬膜下血腫
  4. 外傷性くも膜下出血
  5. 脳挫傷
  6. びまん性軸索損傷
  7. 脳しんとう
脳を包む硬い膜を硬膜といいますが、この硬膜の外側(硬膜と頭蓋骨の間)に出血するものを急性硬膜外血腫、硬膜の内側(硬膜と脳の間)に出血するものを急性硬膜下血腫といいます。
頭蓋骨の大きさは成人以降変わらず、頭蓋骨の中は一定のスペースしかありません。そこに血腫が溜まってくると脳を圧迫します。特に脳の委縮のない若年者では、脳の圧がすぐに亢進するため緊急処置が必要となります。脳幹という「生命の中枢」まで圧迫がおよぶと呼吸や心臓が止まり死亡します。急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫で意識障害が生じている場合は緊急に開頭血腫除去術を行います。脳の圧を減らし、出血を抑える手術のため、頭蓋骨を一部外したままとし脳の腫れを外に逃がすこともあります。これを外減圧といいます。なお、座滅した脳などを摘出することを内減圧といいます。
頭部外傷の分類
急性硬膜外血腫:硬膜表面にある中硬膜動脈が切れて出血することが多く、硬膜と頭蓋骨の間に出血し、血腫(血の塊)が脳を圧迫します。

急性硬膜下血腫:脳の表面の血管から出血します。脳内にも出血や脳挫傷などの損傷を伴うことが多く、一般に硬膜外血腫より経過は悪いといえます。「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン」では血腫の厚さが1cm以上のものは手術を行うとされています。

脳挫傷:脳組織の座滅により出血と壊死が起きるものです。出血や脳浮腫(脳が損傷されむくむ状態)が大きいときは手術が必要です。

外傷性くも膜下出血:脳表の血管や脳実質からの出血がくも膜下腔に流れ込んだものです。 外傷性くも膜下出血のCT 左前頭葉と側頭葉の間(シルビウス裂)に出血がみられる

びまん性軸索損傷:強い外力で脳に回転力が生じた場合、脳深部は脳表部よりも遅れて回転します。脳がねじれ、神経線維(軸索)が引っ張られ損傷するものです。意識障害が続くことがあります。

脳しんとう:頭部外傷により一時的に意識を失った状態で、通常は後遺症なく回復します。
後遺症
脳の損傷が強い場合、遷延性意識障害、麻痺などの後遺症が残ることがあります。自力で動くことはできても高次機能障害により社会復帰、生活復帰が困難となることがあります。高次機能障害とは、記憶、注意、遂行機能、社会的行動などに生じる認知障害のことをいいます。高次脳機能障害診断基準には、社会的行動障害として以下のような所見が挙げられています。
① 意欲・発動性の低下:自発的な活動が乏しく、運動障害を原因としていないが、一日中ベッドがから離れないなどの無為な生活を送る。
② 情動コントロールの障害:最初のいらいらした気分が徐々に過剰な感情的反応や攻撃的行動にエスカレートし、一度始まると患者はこの行動をコントロールすることができない。自己の障害を認めず訓練を頑固に拒否する。突然興奮して大声で怒鳴り散らす。看護者に対して暴力や性的行為などの反社会的行為が見られる。 (高次脳機能障害診断基準より一部抜粋)
飲酒後の頭部外傷
20代の急性アルコール中毒は以前に比べはるかに減っていますが、飲酒後に転倒し頭部打撲で救急搬送されてくる患者は減っていません。
①転倒時に受け身を取れず直接頭部を打つことが多い。
②意識レベルが飲酒の影響で正確に分からない。
③診察や検査に非協力的、拒否する、といったことが飲酒後の外傷患者の問題です。
診療時間外に救急受診する飲酒後の外傷患者では60歳台がもっとも多くみられました。飲酒機会の多さと運動能力の低下が関係していると思われます。